【スイーツ】人生最高のシュークリームは神の国島根にあり『フォルムモントローネのパリパリシュー』

あなたはまぎれもなく幸福です。

だって、まだあのシュークリームを食べたことがないんだから。

ミシュラン三つ星の観光地、10年連続日本一の座に輝く足立美術館の庭を見たあとに、最高のシュークリームでお茶をする感動をこれから味わえるんですから。

あのシュークリームを食べたことがあるあなたも幸福です。

だって、あのお店は島根県の安来にしかないから、あなたはきっとその近くの住人なんでしょう?

だったら飛行機なんて使わずに食べに行けるじゃないですか。毎日210円を握りしめて、通い詰められるじゃないですか。お店でクリームをつめてもらえるじゃないですか。ああうらやましい。

あのシュークリームを食べたけれど、大して感動しなかったあなたも、まあ幸福とは言わないまでもセーフでしょう。

そして私。

あのシュークリームを食べてしまい、感動のあまりお代わりまでしてしまったくせに、島根じゃなくて東京に住んでる私は

めっちゃ不幸だけど幸福だーーーーーーーーーー!!!

 

つまりどういう事だってばよ?

こういうことなんです。

『今まで生きてきたなかで一番美味しいシュークリームに、よりによって島根で出会ってしまい、あまりのアクセスの悪さに絶望するアライさんの図』

 

人生最高のシュークリームは神の国島根にあり

 

お店のお姉さん、覚えていますか?

少しはずかしそうに

「おかわりください。今までの人生の中で、一番美味しいシュークリームでした」

と言ったのが私です。

 

って、メモ書きに書いてある。マジです。どんだけ感動したんだ自分。

改めてみるとおのれでもドン引だぞ。

まあ、仕方ないよな、ホント美味しかったもんな。うん、知ってるよ。

 

予想外の出会いこそ旅の醍醐味ってなもんで、出会いたいから旅の間はできるだけアクティブに動き回ります。

それは、山陰旅で一番の目当てだった足立美術館で、日本一と言われるお庭を鑑賞したあとのこと。

すっかり良い気分で、足立美術館から出ている無料の送迎バスに乗って到着したのが安来駅でした。

旅に出かけるなら、都会の感覚は置き去りにするのがいい。安来駅で30分以上の電車待ちがあるからといってイラつくのは馬鹿馬鹿しいこと。

お茶でも飲んで待とうかと、駅併設のお茶屋さんの店先で見かけたシュークリーム、1個210円。

これと、お茶をいっしょに頂いて、まあTwitterで旅レポでも書いて暇つぶすべ、というのが魂胆で、この時点ではシュークリームが美味しいなんて期待はほとんどゼロだったのです。

安来駅はただの通過点であって、シュークリームを食べにきたわけじゃないんだから。

そんな期待の欠片もないシュークリーム、暇つぶしのお茶の友。まさか、こんな所で運命の出会いをするなんて、誰が思うもんか。それだけに、衝撃が大きすぎたのかもしれません。それで、メモ書きに謎の手紙を書いちゃうくらい挙動不審になったのだと思います。美味しすぎて。


フォルムモントローネのパリパリシュー 210円。

一口かじった瞬間、多分私の目がカっと開いたと思う。

や、多分誰も見てなかったろうから断言はできないけど、それくらい衝撃でした。

驚くのはシュー皮の完成度。

パリパリシューというくらいなので、コージーコーナーよりはビアードパパ。サクっとした味わいが楽しめるシュー皮です。

でも、ただのパリサクでは終わらない。下手にパリサクな皮だと、脆すぎて中のクリームを支えきれずに流れ出ちゃったり、ちょっとかじっただけでぺしゃんとつぶれてしまうのもある。

けれどこのシュー皮はしっかりしていて、食べている間、比較的粘度のすくないクリームを支えて、最後まで美味しく食べさせてくれるのだ。しかも、まぶしてあるナッツの香ばしさが絶妙にマッチしている。最高だ。

クリームについては賛否両論あるかもしれない。

注文してから、限界に挑戦する勢いでたーっぷりにつめてくれるカスタードクリームが、だいぶ甘め。これが気に入らんという意見もありそうである。かくいう私も、カスタードクリームは甘くないほうが好きだ。言っていることが矛盾していると思います。

でも、このシュークリームに関しては、なんかオッケーなのだった。許せる、どころか、これだ!というかんじ。

シュー皮の出来がいいからクリームには目をつむりましょ、ではない。普段はあまり好まない甘いクリームが、なんかこのシュー皮と、紅茶があれば美味しくなるのだった。相性抜群、という4文字では言い表せないほどかみ合っていた。

きっと、シュー皮だけ、クリームだけがめちゃくちゃに美味しくても、こうはいかないんだろう。最高のソリストがそれぞれ録音した音源を集めても、最高の合唱にならないのとおなじだ。相性、組み合わせる努力、ハーモニーの大切さを思い知った体験でした。

そして、一個を無言で食べ終わり、紅茶を飲んで落ち着いて、次に出た行動がこの章冒頭「おかわりください」。

いや、私だって一応20代女子ですよ。おかわりなんて食い意地張ってるみたいではずかしいよ、しかもシュークリームが1個で我慢できないなんて。

でも仕方ないじゃないか!美味しかったんだもの!

しかもここは山陰、毎日会社帰りに寄れるお店とはワケが違うんです。次に訪れることができるのは、もしかしたら数年後になっちゃうかもしれない。その間に、お店に何かないとも限らない。最悪閉店して、二度と食べられないことだってあり得る。

そう思ったら我慢できずに、旅の恥はかきすて、世は情け。

2個食べたらさすがにお腹いっぱいでハッピーになりましたからもうなんかいいや。420円分太るだろうけどいいや。後悔なんてない。

というわけで、もし足立美術館に日本一の庭を見に行くことがあれば、もしくはご近所にお住まいでしたらば、ぜひ安来駅でティータイムをどうぞ。

ちなみに、お店の人に「通販はしないんですか?」と聞いたんだけれど、「注文を受けてからクリームをつめるのでパリパリシューが出せる。クリームをつめたままだとふやけるので・・・」とのことでした。

そりゃそーだ。


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