【ノマドワーク】山手線は、意外とミニオフィスになる

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【なぜ山手線をミニオフィスにするのか】

先週、私はニューメキシコ州タオスでメリデル・ル・スールに会った。彼女は八十歳を超える作家で、小説や短編や詩の本を何冊か出している。現在は住所不定らしい。知り合いを訪問して泊めてもらい、どこでも書くのだとい う。(中略)中古の手動タイプライターを30ドルくらいで売っているところはないかと訊かれた。いつもそうするらしいが、使い終えたタイプライターは処分 して次の場所には引きずっていかない。仕事部屋なんてその程度のものなのだ。(『魂の文章術』P142)
魂の文章術―書くことから始めよう
この書籍に出てきた、『本物のノマドワーカー(80歳)』の事例を読みながら、心の中で大きくうんうん、と頷いていました。「実際、書こうと思えばどこでも書ける。どこだって仕事場にできるよね」と。

私は、山手線沿線に用事があることが多く、よく乗車しています。その際、特に電車が空いている日、時間帯などは、無駄に遠回りをしていきます。山手線は一周約60分ですから、たとえば10分で移動できる近くの駅へ、わざと反対回りに乗って50分かけていくのです。

そして、その50分の間、メールの返信をしたり、本を読んだり、ブログ記事を書いたりして過ごします。

なぜ自宅でやればいい作業をわざわざ山手線に持ち込むかというと、車内には、カフェに近しい感覚があるから。

一般的なカフェって、隠れ家のようなところを除けば、人の話し声がするし、近くの机には他人が陣取っていて気が散りそうな気がするし、あまり仕事に向かな い環境だと思われるかもしれません。しかし実はそうでもないのです。実際、カフェに本やPCを持ち込んで作業をするひとって沢山いらっしゃいますよね?

 このように、多くの人が集中力を求めて騒々しいカフェに集う様子を見ると、カフェが自宅より集中力をアップさせてくれるのは事実のように思われます。

 では、なぜ自宅からわざわざ外に仕事を持ち出すのでしょう?

 それは、自宅には雑事や誘惑が多すぎるからなんです。「ああ、洗濯物しなくちゃ。ご飯の用意を しなくちゃ。読みかけの漫画が読みたい、TVを見たい・・・。」毎日がこんな調子です。真剣に何かに取り組みたいと考えるとき、こんな雑念からは離れたいですよね?だからこそ、人は外に仕事場を持ちたがるのだと思います。

 さらに、仕事場を固定すると、その仕事場にも雑事が発生します。仕事場の定期的な清掃、来客対応、電話番・・・。片手間にできることの並行作業ならまだしも、意識を一点に集中して作業を行いたいとき、10分に1度電話が鳴ったら?人が訪問して きたら?

 どんなに心穏やかな一日でも、こんな状況ではろくに筆が進まないでしょう。だから私は仕事を外へ持ち出します。自宅の雑事から、自分を切り離すために。

 もうひとつ、これは私の場合なのですが,どうも昔からひとつの場所に通い詰めていると その場に慣れてしまい、集中力がふっつり切れてしまうという困っ たクセがあるようなんです。要は飽き性で新しいもの好きなんですね。だから、定期的に仕事場を変えたくなります。ふと外を眺めたとき、窓の風景が違ったものであってほしいと願ってしまうのです。私のように、ノマドワーカーのなかでも、さらに放浪を好む人は、旅好き、引っ越し好きな人たちに似た考えを 持っているのかもしれませんね。

 というわけで、私は自宅の外をどこでもオフィスに変えるのが大好き。とりわけ山手線は頻繁に利用するうえ、比較的居心地もいいのでよく遠回りしてしまいます。そんな『ミニオフィス』のちょっとした活用例をご紹介します。

【ミニオフィスに持ち込む装備】

私が今日山手線に持ち込んでいた装備は以下の通り。

・大きめのバッグ
・本
・モバイルPC(Let’sNoteR-6)
・イーモバイル
・iPhone
PHS300(イーモバイルを無線LAN化。出先でモバイルPCとiPhoneを無線LANで同時接続)

 これは、山手線のなかであらゆる仕事をしたいときの重装備です。まず最初に、大きめで、ある程度かたちを保ってくれるバッグをおすすめします。本を読むときにも、PCで作業をする際にもテーブルの代わりになってくれるものがいい。

 また、装備はその日の目的によって随時変更します。読書だけしたいときは、わざとPC+ネット環境を持ち込まなかったり、あるいは、なるべく荷物を減らしたいというときは、本やらPCやらを置いて出かけることがあります。流石にiPhoneは毎度持って歩きますね。地図やら、乗り換え案内やらのちょっとした調べ物は、この端末が一番アクセスしやすいためです。

【ミニオフィスのいいところ】

・出来ることが少ないので、作業に集中できる
一番の理由です。誘惑が少なく、また電車の中なので来客や電話もできません。目の前の出来ることに全力を投じることができる、希有な場所を、切符代で提供してくれます。

・好きな駅で乗り降りして、いつでもショッピングやご飯が食べられる。
これは、大きな駅が多い山手線ならでは。主要な駅ではエキナカがとても充実していて、ショッピングやご飯に事欠くことがありません。

たとえば、

うどん食べたいな → 恵比寿(東口エキナカのうどんやさん)
カレー食べたいな → 大崎(スープストック)

なんていうのが、最近の私の定番だったりします。

【ミニオフィスの心得】

・むくみ解消技術を知っておくとよいかも。
もし、1時間近く乗車するなら、足のむくみにご注意ください。特に自覚症状があるかたは、時々軽くマッサージしてあげるとよいです。

・混んでいるときには居座らない。
ほとんど100%の人が30分以内に下車するとはいっても、朝のラッシュ時にこれをやるのはどう考えてもご迷惑。やめましょう。そもそもラッシュ時は、座っている人でさえ身動きが取りづらくなるのでキツいです。

・できれば席の端が取れるとやりやすい
端の席を取ることができると、自分の体と、サイドの板の間に本やノートを差し挟んでおくことが出来て何気に便利です。

 以上、山手線ミニオフィス化の事例でした。読んでいてお気づきかとは思いますが、別に山手線じゃなくてもいいのですよ。特に、定期券を活用できる方なんかは普段通勤で使っている路線を使って、平日には通り過ぎてしまう街で下車して散策するのも一興。せっかく一律で支払っている定期券なのですから、目一杯活用したいですね。