iPhoneが売れないひとつの理由。

iphone

iPhoneの魅力は使ったら分かる。

私は、幸運にも、日本でiPhoneがまだ品薄だった頃に偶然手に入れる機会があり、それ以来ずっと愛用、その機能に大満足している一人です。

が、確かに、日本でのiPhoneの販売実績は未だに優れませんね。
0円になっても「売り上げが○倍に増えました!」なんて景気のいい話を聞かないし。

日本でiPhoneが売れない理由について、巷で主に原因として挙げられているのは

『日本独自の携帯仕様を実装していない』(おサイフケータイなど)
『主要な機能までもが、日本の携帯より明らかに劣っている』(カメラに接写機能が付いていないなど)

という、日本の独自仕様への追随が間に合っていないために起こる使いづらさが、よく議論の的になっているようです。

あと、月額料金が高すぎる!という声もよく聞きますね。(私もそう思う。)

確かに、これらはiPhone売れない問題の主要な原因を占めると思うし、すでに多くの方がこの原因について語ってくださっています。

以下のページを参考にしてください。

特に、以下は 2008/07/11に公開された記事にもかかわらず、今の状況をほぼ正確に言い当てていて驚きました。

いずれにしろ、ずっと書いてきたように、ちょっと斜に構えたと言うか悲観的と言うかではあるけれど、 iPhone というのは“ひとつの携帯電話プロダクト”としてはそこそこのヒットを収めるものの、ことここ日本では、携帯業界全体からすれば結局「大勢に影響はなかった」となりそうな気もするんですね。
まさに「大山鳴動して鼠一匹」というようなね。そこまで影響がないわけではないとは思いますけど。
日本では iPhone 3G がそれほど売れないと思うその理由:Sky’s The Limit “CNET Japan EXTRA” – CNET Japan

というわけで、今回 iPhoneが売れない理由を探っていくにあたり、今回は本体の機能や価格に目を向けるのではなく、iPhoneが日本で発売になった『あの日』に目を向けてみたいと思います。

2007年7月11日が、『iPhone売れない』問題の発端ではないだろうか。

「発売直後の品不足が痛手だったように思う。あのタイミングでしっかりと在庫を確保していれば、もう少し伸びは期待できた」(IDCジャパン)。

発売直後3日間の品薄感は確かにiPhone 3Gフィーバーを盛り上げるには最高の演出だったように思う。しかし、その後もしばらく在庫が少ない状態が続いてしまった。家電量販店には時々入荷がある ものの、街中のソフトバンクモバイルショップにはほとんど入荷されないという状況もあった。「iPhone 3G」の売れ行き失速、決めつけるのはまだ早い? モバイル-石川温のケータイ業界事情:IT-PLUS

果たして、日本で発売直後に起こったiPhoneの品薄状態は恣意的なものだったのでしょうか?
上の記事を読む限り、おそらく在庫の読み間違いだろうとは思うのですが、正確なところは分かりません。

ちょっと情報をあたってみたところ、アメリカでの発売時には、こんな疑惑も持たれていたようです。
発売初日のiPhoneの品不足は演出?

確かに、人には希少性のあるものに惹かれる気持ちがあります。
でも、たとえどんなにそれがレアモノでも、それをほしがる人の母数がたいしたことなかったら、結局売り上げは長続きしません。

アップルコンピュータと言えば、アメリカでは押しも押されもしない一大多国籍企業として認識されています。
しかし、日本での認識では、iPhod, MacPCを売っているところ、という認識に終始するのではないでしょうか。さらに、携帯市場で言えば、すでにシャープ、松下、NEC、京セラなどなど、多くのメーカーがしのぎを削る一大市場を形成しており、その中に”Phone”という名を持ったiPhoneが乗り込んだとしても、それは『有名な音楽プレイヤーやPCの会社が、新しく携帯を作った』以上の衝撃を人々に与えないでしょう。

iPhoneを人に実機を貸して紹介するとき、そのインターフェイスの美しさや操作方法だけで、ほとんどの方が夢中になって触ってくれます。ほとんどの方が『面白い!』と、最初はポジティブな反応を返してくれるのです(そのあと、料金プランなどを聞かれて、ちょっと苦い顔をされる方は多いですが)。

私は、iPhoneはガラパゴスと呼ばれる日本の携帯電話群からも、さらにPCやPDAなどからも、全く一線を画す、全く新しくて面白い端末だと思っています。もし、あなたの近くにiPhoneユーザーがいるならば、その人に「iPhoneって、日本のケータイと同じモノ?」と聞いてみてください。おそらく、よほど喋り下手な方でない限り「基本的な機能は一緒なんだけど、日本のケータイとはいろいろ違ってるんだよ」と言ってくれるでしょう。そのあと事細かに機能を説明し始めるユーザーもいるかもしれません。

要するに、iPhoneは、実際に触れてみればとてもポジティブな反応を引き出せる、商品力が非常に強い製品だということなんです。ここら辺は流石アップルだなあと。

だからこそ、この製品は、発売日から、また遅くとも発売日の数日後から、とにかく多くの人に手渡すべきだったと思う。あるいは、そうでなくても、iPhone体験イベントを積極的に開くべきだったと思う。実際に触れてみれば、誰もがこの製品について語りたくなる。そんな土壌を、発売直後から一気に広げることがもしできたなら、あるいはこの売り上げももう少し変わってきたんじゃないだろうか、、、と、残念に思ってしまうのです。

もちろん、この意見に反論もあろうかと思います。たとえば、ニンテンドーDSなどと比較して、『アレはずいぶん長い間品薄だったけど、ほとんど人気が衰えることなくバージョンアップしてるじゃないか』と思われるかもしれませんね。

しかし、今回のiPhoneの件に関して言えば、一番問題だったのは、『商品に魅力があっても、(携帯業界において)知名度が伴っていない』ということ。普段持っている端末は携帯だけで、ノートPCなど一顧だにしない人に、『アップル』と『任天堂』の名を聞かせれば、おそらく任天堂のほうがよく知られているでしょう。(1889年創業の日本の老舗メーカーですしね。)

任天堂は、ゲームメーカーとして多くの日本人に認知されており、ゲームハードも基幹事業に沿うものですから、発売前から期待する日本人は多いはず。そして、実際製品的にも優れていれば、その製品の良さがクチコミを伴って、一気に伝わっていきます。

ニンテンドーDSとiPhoneを比べたとき、方向性は違えども、どちらの製品も、人々の間でクチコミを起こすに足る魅力があることは間違いないと思うんです。(個人的にも、両方触ったことがあります)だというのに、片方は品薄状態でも(そして品薄状態が解消されたあとも)人気を維持し続け、かたや品薄状態が解消された瞬間に販売実績が低迷する・・・。

最近クチコミ関連の本を読みあさっていて、結構影響されてるというのもあるんですけど、商品の魅力があるなら、やっぱりクチコミを起こす人の総数が、商品人気に結びついていくんじゃないかと。

そのためにも、やっぱり製品の供給はきちんと出来ていたほうが、結果として売り上げにつながるんだと思います。

人気があって、売り上げ維持できる見込みが立っていて、更にほどよく製造制限するなんて、そんな奇跡的な販売バランス、よほどの感覚や経験の持ち主でなければやってられませんよ。

・・・ああ、またひとつ、任天堂最強伝説が・・・。