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【社会】東大エリートの『名誉若者』論に巻き込まれるのは御免です

Written on:11月 17, 2011
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特集ワイド:「若者ってかわいそう」なの? 20代の70%が今の生活に「満足」

若者はもっと「自己中」になって社会を変えろ~「絶望の国の幸福な若者たち」著者インタビュー~

 

古市憲寿さんのせいだけとは、もちろん思わない。その周囲に、彼を若者のロールモデルにしようというメディアの思惑が渦を巻いているのが火を見るより明らかだからだ。 

それに、彼の著書だってまだきちんと拝読していない。

だから、この記事はあくまで、↑の2本の記事に目を通しただけ、という状態から書き始める、昔ちょっと社会学をかじった26歳女子の悲しい気持ちと思ってください。

ちなみに、ちょっと昔にこんな事を書いていたりした。 

【社会】名無しの世代ですら、社⇄会を信頼していないという(今更過ぎる)話

 

===

 

さて。

みなさんはキング牧師をご存じでしょうか。高校の世界史の教科書にも出てくるくらいだから、まあ大体の人が名前を耳にしたことはあるんじゃないかな。黒人への人種差別撤廃を求める運動の中心人物になった人です。「I have a dream」から始まる演説でも有名。1968年に暗殺されてしまいました。

実はもうひとり、キング牧師と同じくらい活躍した公民権運動家がいます。マルコムXという人です。この人も活動の最中、1965年に暗殺されてしまいます。アメリカの黒人問題を語るとき、よくキング牧師と比較されるひとです。

キング牧師とマルコムXが比較されるのは、その有名さもさることながらもうひとつ、その活動内容の対照性が際立つから、というのがあります。キング牧師は非暴力主義、マルコムXは『暴力も辞さない』という姿勢で活動に臨んでいました。

Wikipediaには、『アメリカで最も著名で攻撃的な黒人解放指導者として知られている。』と書かれていますね。

とはいえ、マルコムXは一度も暴力事件を起こしたことはないのですが、当時の白人主導のメディアによって、暴力的な印象をより強く印象づけられてしまった側面があります。

マルコムXはカリスマでした。公民権運動が始まる前は、たとえ無実の罪で警察に捕まり、留置所に連れて行かれたとしても、黒人は抵抗できなかった。力の問題ではなく、心の問題でした。白人に抵抗するなんてとんでもないと思っていました。皆ガラスの天井に頭をうちつけていたのです。

でも、マルコムXはそれをやって見せた。自分は白人に対して正当防衛すると宣言し、黒人民衆を鼓舞し、いざとなれば誰もがそれを振るえる可能性を開いて見せた。

『自己防衛の正当性を知らなかった黒人一般に、マルコムXの宣言は画期的だった。売られた喧嘩は買う、という積極性を示すことさえ、「アメリカの黒人」には抑圧されている状況だった。そのような自己表現はあり得なかったのだ。(『マルコムX 人権への闘い』P133)』

キング牧師との対立があったとも言われていますが、1964年前後には和解があり、またマルコムXが亡くなった際には惜しむコメントを発表していることから、この頃にはすっかり仲良しだったのだろうと言われています。

===

抑圧する側(白人)は、抑圧される側(黒人)を、あの手この手で分割しようとします。

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・黒人の中に白人のような待遇を与えられるほんの僅かな『名誉白人』を作りだし、「私はものすごくたくさんの努力をして(白人みたいに)立派にやっているよ。今君が苦しいのは私のようにならなかったからじゃないか」と言わせて、一般民衆と名誉白人の対立を煽ってみたり

・一部の黒人にお金をあげて、その人達を味方につけ、黒人というまとまりを崩しにかかったり(これについては、沖縄を想像してみると分かりやすいかもしれない。アメリカ軍基地の土地を持っているひとたちは、国からたくさんお金を貰っている。『基地移転』をたくさんの沖縄県民が求めながら、実際移転されると困る人たちも確かにいるのだ)

・黒人に同情するふりをしつつ、白人との『融和』を解く白人の論客がいたり

・キング牧師とマルコムXの違いをやたらと書き立てて、マルコムXを悪者扱いにし黒人民衆を引き裂こうと画策したり

他にもあれこれあれこれ。

で、タイトルにもなっているのだけれど、上の2記事、どう読んでも銀座のクラブで酔ってる重役のおじさまたちの口に甘いことばっかり言ってて、経済的に言説的に、その他もろもろ抑圧され続ける若者の困難を見ないふりして「僕らは幸せです」と言い切っているんだが、なんで黙って『名誉若者』やってるんだろう?というのが不思議で仕方ない。

こんなこと言ったら「そっかー、最近の若者一般はこれから給料増えなくても別に不幸じゃないんだ、じゃあウチもこのままでいっか」と、自分に都合良く解釈する経営者が居ないわけがあるまいよ。勘弁してくれ。

というか、『若者』という言葉自体がそもそも緩やに少しずつ色を変えながら折り重なる属性で、ここで語る『若者とは何か』を先に定義しておかなきゃお話にならない。それくらい百も承知でしょうに。

記事の修正が出来なかったのだと言われればそれは仕方ないなぁと思うけれど、まともなメディアなら、必ず一度原稿確認を求めてくるはず。その時修正できなかったということは、ある程度思うとおりに書かれていると・・・とらえなくちゃいけないんですかね?

『若者はかわいそう』と言われても僕らに実感はないですね
ここでいう、”若者は誰?” ”僕ら”って誰? を宣言してから始まる話のはずなのに、それがすっぽ抜けている。だからものすごい違和感があるんだ。これを大学でやったら、ウチだったら余裕で先生から突っ込みもらいましてよ、ていうか卒論でこんなの査定通らないでしょうに。ネットの記事だったらちょっとくらいミスリードさせてもいいんか?という話。

一応確認しておくと、古市憲寿さんは東大総合文化研究科の学生さんで、『絶望の国の幸福な若者たち』等の著書を出版、上野千鶴子さんとも対談しておられます。

ここまで研究しておられて、かついつの時代も抑圧される側として名高い”若者論”を扱う方なら、まさか被差別者について触れていないはずがあるまい。今回は黒人問題を例に取りましたが、ジェンダー論(これなんか上野千鶴子さんの専門)、沖縄問題、部落差別、その他多くの権力の非対称性が焦点になる問題は、いつもある程度の類型があると、”社会のしゃ”くらいしかかじっていない私だって知っています。つまり、十中八九、古市さんはわざとこのスタンスを取っているのだと思う。もしくは、(ミスリードを許しても)易しく若者論を語りたいというメディアの意向を受け入れている。はねつけることが出来ていない。

気持ちはちょっと分からないでもないんです。私はインタビューを受ける側も、ライターとして書く側としてもやったことがありますから、ライターさんがすごくいい人だった場合、ライターさんがちょっと大きくものを書いてきて、それを「済みませんが修正してください」とお願いするのは心が痛まない、でもない。お互いの苦労も分かる。
でもね、その言説が、他の”若者”とお偉いさん達が見なす人たちに、間接的に害悪になる可能性があると自覚があるなら、修正入れなきゃいけないよ。私だったらそうしますよ。

たとえば、古市さんがもしバイトを掛け持ちしながら2児を育てる母子家庭のお母さんで「毎日バイトはキツイですが、なんとかやれています。子どもは元気だし、ご飯は食べられるし、幸せです。だから『若者はかわいそう』と言われても、私にはあまり実感がありません」 と言うなら感動的な話になります。けれど東大エリート学生さんが若者代表って言われても、そりゃあお金持ちが集う最高学府で博士課程まで進むような方ですもの、労働に押しつぶされそうで、でもそこから逃げ出せば生活が成り立たない(と思っている/思い込んでいる/思い込まされている)人たちの気持ちを理解するよう努める、というのも厳しい話でしょうか。それとも、これはちょっと逆差別が過ぎますか?ごめんなさい。でも、「『若者はかわいそう』と言われても僕らに実感はないですね」というその一言に下敷きにされ苦しむ人たちの顔が浮かぶようで、私にはとても賛同できない話です。少なくとも、この記事によって、”若者”とひとくくりにされうる26歳女子の心は傷つきました。

一緒にされたくないのです。20代の70%以上が今の生活に「満足」している。だから?”若者”は幸せ?残りの3割はどうでもいい?

  そして残りの3割はどうでもいいと、「若者は幸せなんだから給料据え置きでも、やたらめたらに働かせても構わない」と見なされかねない文章に”若者”として私も巻き込まれている、残りの3割を踏みつける共犯にさせられている。

その事実に、私はひどく傷つくのです。

ひとりでも多くの人に、勘違いされたくないので、ここでちゃんと書いておきます。

このインタビューの中の”若者”に、私はいないよ。

===

 2011/11/19 0:10 追記:

 複数の方から、「名誉若者」じゃなくて、「名誉大人」とか「名誉中年」とかじゃないか?とツッコミをいただく。全くその通りです、タイトルだから今更直すわけにもいかないし、お恥ずかしい限りです。凡ミスぅ

 「名誉若者」 = 「名誉『若者を抑圧する人たち』のスタイルをとっている若者」 の略ってことでひとつ。・・・苦しい?

 『若者を抑圧する人たち』を一言で言い表す便利な言葉って なにかありませんかー!

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